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イマイのコラム
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仮想通貨
2018/02/06
仮想通貨が580億円分なくなったとの新聞報道を見ました。仮想通貨の代名詞といえるbitcoinは、昨年年初には10万円だったものが年末には200万円になりました。年が明けると100万円に暴落したとの報道もありました。自分自身は「なんだかよくわからないモノ」という範疇なため、手を出しませんでした。

朝日新聞デジタルのインタビュー記事で、経済学者の岩井克人さんが次のように言っています。「人々が『貨幣になるかもしれない』と期待と興奮の中で値上がりを目的に買い始めたことが、逆に貨幣になる可能性を殺しています」「あるモノが貨幣として使われるのは、それ自体にモノとしての価値があるからではありません。だれもが『他人も貨幣として受け取ってくれる』と予想するからだれもが受け取る、という予想の自己循環論法によるものです。実際、もしモノとしての価値が貨幣としての価値を上回れば、それをモノとして使うために手放そうとしませんから、貨幣としては流通しなくなります」

…なるほど、貨幣は価値を持ってはいけないモノであって、現在の投機の対象となっているbitcoinは貨幣としての交換手段となりえなくなってしまったとのこと。今回流出したコインチェック社のNEMはbitcoin以上に値上がり幅が大きかったので、もう「交換手段」としてではなく「投機の対象」としての価値しか持たなかったようです。

株式投資や金投資と比べてみます。株式は主に上場会社の株式を市場から買い、値上がり益を期待するものですが、同時に配当も目的となります。また、投資先の経営に賛同し、応援する意味での投資もあります。投資先が倒産すれば紙くずとなってしまいますが、長期的な投資も可能です。

もちろん、短期の利益狙いで投機の対象となることもあります。金投資は大きな値上がりや値下がりはないですし、利息や配当も望めません。しかし、現物があるため価値がゼロとなることはありません。これは金の全世界での流通量が制限されているからで、希少価値によって価値を保っています。両方とも、長期的な視点での投資を目的とすることによって、インフレへの対応が可能となります。

仮想通貨は、本来は通貨としての価値を持つはずです。以前の仮想通貨であれば物との交換が可能でしたし、海外送金などでは本領を発揮できました。この用途での活用であれば前途洋々だと思いますが、岩井氏は同じインタビュー記事の中で次のように言っています。

「貨幣価値の安定には中央銀行のような公的な存在が必要であり、中央銀行を不要とすることを目的としたビットコインは、万一貨幣になっても長期的には滅びる」「貨幣は、だれもが『他人も貨幣として受け取ってくれる』と予想するから貨幣として受け取る、という自己循環論法で価値を持ちます。従って、その予想が危うくなるとだれも受け取ろうとしなくなり、その時、貨幣は貨幣でなくなる。これがハイパーインフレですが、このような不安定性は貨幣の原罪であり、貨幣経済に生きる限り、その可能性から絶対に逃れられない。だからこそ、有事に経済を制御する中央銀行のような公共機関が絶対に必要なのです。

しかし、そもそもビットコインの基本思想は自由放任主義で、だからこそ個人の匿名性を保護できるネット上での分散管理技術(ブロックチェーン)を導入したのです。『中央』を排除するために生まれたビットコインは、まさに『中央』を持たないがために、仮に貨幣として流通したとしても必ず滅びます。もちろん貨幣になる前に滅びる可能性がはるかに高いですが」

なるほど、中央を持たない貨幣は信用を失うことによって価値を持たなくなる…確かに紙幣や硬貨は単なる紙や金属片であり、何ら価値を持ちません。国の信用によって1万円札は1万円の価値を持ち、1万円の商品と交換できるのです。途上国では自国通貨を信用せず金のアクセサリーによって財産を守っているという話をよく聞きますが、これと同じで信用されない通貨は価値を持ちません。

本来の目的で流通されても、いつ破綻するかわからない仮想通貨ではやはりリスクが高すぎます。